一時停止場所にて

好きなものの話、わからないものの話、日々の雑念など

「今出川通りに面した席」には座れなかったのが心残り

随分と久しぶりの更新になりました。

もう忘れられていたのではなかろうか(そもそもそんなにこのブログを読んでいる人がいないというのはさておき)。

書きたい話はいろいろあったのですけれど、人に読ませることができるような文章にまとめるとなるとそれなりに労力が必要だなあとつくづく感じている今日この頃です。

私の好きな某バンド、FジファブリックのY内さんという人はブログを溜めに溜めて、巻物のような長さのそれを投稿するということが度々あるので(今年はそうでもないけれど)それにならって前回の更新以降で書きたかった話を全部書くということも考えたのだけれども、それはさすがに無謀なので断念。

とはいえあまり放置してもしかたないので、とりいそぎいちばん最近の書きたかった話を。

 

先月ひとりで京都に行く機会があったので、森見登美彦作品好きとしてはこれはチャンスと思い、『夜は短し歩けよ乙女』『四畳半神話大系』に登場する場所や『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』で紹介されていた作者ゆかりの地をめぐってみました。

京都に行くことはこれまでにも修学旅行であるとか友人との旅行などで何度かあったけれど、好きな小説の、いわゆる「聖地巡礼」のようなことはなかなかほかの人と一緒だとできない。ということで今回は千載一遇の(というと大げさですが)好機であったわけです。

特に『夜は短し歩けよ乙女』は、初めて読んだ9年前からずっと大好きな、思い入れも深い作品。四条木屋町先斗町界隈を歩いてみたり、作中に登場するバー「月面歩行」のモデルになったとされる「bar moon walk 四条木屋町店」に足を踏み入れた時の喜びといったら。

ちなみに店内では映画版の「夜は短し歩けよ乙女」が音声なしで映像のみ流れており、映像を観ながら大体の台詞は頭の中で補完できていることに気づいて若干自分に引いたのはここだけの話。

何よりうれしかったのは京大北門前の喫茶・進々堂に行けたことでした。

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夜は短し歩けよ乙女』では最後のシーンに登場する喫茶店。あのラストシーンは、それこそ読んでいるこちらも「お腹の底が温かくなる」気がして、あの本が私にとってただ単に面白おかしい作品としてではなく、とてもいとおしくて大切な一冊である理由がそこに集約されているともいえる場面だと思います。これは冗談ではなく本当に。

そんな場面の舞台として記憶されている進々堂で飲むコーヒーは、それこそ作中の偽電気ブランではないけれど、「人生を底の方から温めてくれる」ような気さえしました。

 

京都から帰った後、久しぶりに『夜は短し歩けよ乙女』を読み返しました。以前より少しばかり京都の地理が(自分が歩いたところだけは)わかって、地名を見たときにその街の光景や雰囲気もイメージできるようになっていたのは喜ばしいことでした。本を読み進めるにつれ、先輩や黒髪の乙女は以前よりいっそういきいきと京の街を駆け巡ってくれるようになりました。そして、やはり相変わらずこの作品は私にとってとてもいとおしいなと再三思うのでした。

 

久しぶりの投稿で特にこれといった落ちもない話でしたが、とにかくこんなふうに何かを好きでいることで人生の温度が少し上がるというのはとても良いなあ、と思っている次第です。

 

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)